見付面積と全体壁量の計算

壁倍率とN値計算の関係とは?

前回のブログでは、耐力壁の種類と特性について
1、耐力壁とは?
2、耐力壁の種類
3、壁の強さ=壁倍率
の3つに分けて、お話をさせていただきました。
今回のブログでは、前回の続編として
壁倍率とN値計算の関係について、
お話をさせていただきます。

【N値計算とは?】

N値計算という言葉は少し聞き慣れない言葉ですね。
平成12年の告示により、全ての木造建築物についての簡易的な
構造計算の方法について規定されたもので、告示改正後、
20年近くになりますが理解していない方も少なくありません。
この【N値計算】では、
地震時に柱の上下に加わる引き抜き力の大きさを求め、
適切な構造金物を選定する事を目的としており、
建物の倒壊や損傷を防ぐことにもつながります。

【中間検査の義務化!】

福島県内では
建築確認申請に関わる一般戸建て住宅においても、
平成30年7月から中間検査が義務化となりました。
これに伴い、
今まで添付不要だった構造図面の添付が必須になります。
要は、
壁量計算、4分割法による計算、N値計算についても
正確に図面化し提出が必要になるわけです。
平成30年7月以前は、提出は不要でしたが、計算により
安全性の確認は法律により規定されていました。
しかしながら、中間検査の義務化以降、確認申請の審査に
これらの図面の影響により時間がかかっているようです。
なお、中間検査の義務化については、
少し前のブログでご説明していますので、
よろしければご覧ください。

【柱の引き抜き力とは?】

地震や風圧力は基本的に水平方向(横からの力)として
壁量計算を行います。その際に、横方向の力が加わると
一方の柱の下の部分(柱脚)には、引抜きの力(引張力)
もう一方の一方の柱の下の部分(柱脚)には
押え付ける力(圧縮力)が作用します。
この引抜きと押え付けの力の大きさは、
建物全体の大きさに加えて、
柱の隣の「耐力壁」「壁倍率」が大きく影響します。
耐震性を上げるために、耐力壁の設置は必要ですが
壁倍率が大きい場合や、筋かいの方向により、
柱に大きな引抜きの力が作用することもあります。
この引抜き力の大きさを求め、
適切な構造金物を選定する事がN値計算の目的です。
もちろんですが、
耐力壁をバランスよく配置することはとても大切です。

【N値計算と積算】

N値計算では、耐力壁が隣にある柱、全てについて
引き抜き力の大きさを計算で求めます。
電卓でも可能な程度の計算ですが、
計算の流れとしては、
1、「各階ごとの見付面積の算出」

2、「必要壁量と充足率の確認」

3、「4分割法により外周周りの壁量充足率の確認」
全て100%以上で、偏心率の検討省略可能

4、「N値計算により、各階、全ての柱の検討」

5、「適切な構造金物の選定」となります。

要は、各計算過程ごとに、安全性を確かめた後に
ようやく「N値計算」となるわけです。
また、この計算が完了しなければ、
壁量の種類と位置及びヶ所数、構造金物、
ホールダウン金物の種類とヶ所数も決まらないため
詳細な積算(見積り)はできないのです。

【計算していない建物=ブレーキのない車】

上記のような構造的な安全性の確認については、
建築基準法、建築士法で規定されているのですが、
なかなか普及していないのが現実です。
構造計算をしていない建物は、
ブレーキのない車に乗っているようなものです。
もしも、ブレーキのない車が売っていたら、、、
誰も乗らないですし販売できませんよね。
一般の戸建て住宅でも確認申請が必要な地域では
中間検査は義務化になりますが、
確認申請が不要な地域では建築工事届の提出のみで
新築できてしまい大きな問題です。
つまりは、構造的な安全性の検討をしなくても
新築できてしまう矛盾が実際にあるから問題なのです。
大きな地震により建物が倒壊してからでは遅いのです!

実際に我が社の現場でも、
建築工事届のみで施工可能な地域はありますが、
全ての建物で、構造的な安全性の確認をしています。
私は全棟で計算をしていますので、工事中の現場を見れば
構造金物が適正かも判断できますので、ご安心ください。
なお、これらの計算は、木造建築物で、平屋建・2階建まで
安全性の検討に使用する方法です。
木造3階建ての場合には、さらに複雑な計算が必要になり、
求められる要件も一気に厳しくなり、審査も難しくなります。

次回のブログでは、『構造計算の次に必要なこと』と題して、
省エネルギー性能の大切さと、建築士の役割について
お話しさせていただきます。

投稿者:

星 隆行

株式会社星工務店代表取締役。1級建築士事務所studio_taka代表。1級建築士。高耐震、高断熱に特化した住まいの設計・施工を手がけています。このブログでは、建築に詳しくない方にもわかりやすく解説、ご説明しております。ご意見、ご質問等がございましたらコメント欄からお気軽にお尋ねください。